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2026-02-24
シュートストップは、ゴールキーパーによる単なる役割ではありません。
シュートを「止める」ことは、水球文化を豊かにする劇場的な名場面です。
今回のテーマは、「シュートストップ(基本と実践)」です。
シュートストップとは、言葉の通り「シュートのボールを止める」ことです。
シュートを止めるという最終的なプレーを実現するには、ゴールに向かってくるボールの止め方だけではなく、そこに至るまでの予測や事前準備が大切になります。

シューターに対してゴールを隠す位置に立つことが最重要です。
シュートはゴールに向かうので、そのルートを封鎖、限定することで相手の得点機会を阻止することができます。極端に右に寄っていたり、極端に前に出てしまうことで空いたコースに放たれるシュートを塞ぐのは簡単なことではありません。
皆さんには、正しいポジショニングを身につけ、チームの勝利に貢献する信頼されたゴールキーパーになっていただきたいです。
ゴールを守るためにゴールライン上に立つだけではなく、ゴールの中心で構えることが基本です。そのためには、ボールと左右ポストを結んだ“三角形”を意識する。
その中心からシューターに近づくことで、実質的なゴール面積を減らせます。
✔ ゴールの中心で構える
✔ ボールとポストを結んだ三角形
✔シューターに近づくことでコースを封鎖(限定)できる
✔実質的なゴールの面積を少なくする
シューターに近づくことでコースを封鎖(限定)することはできるが、反応するための時間は短くなります。
実質的なゴールの面積を少なくすることやコースを封鎖(限定)を優先し、ゴールから前に出過ぎてしまうと、ループシュートで頭上を狙われてしまいます。
✔ ゴールポスト
✔ ゴールバー
シューターはもちろんのこと、この両方を意識したポジションを取ることが必要です。
トップレベルのゴールキーパーは、意図的に少し前方にポジションをとり「ループシュートもできる」という選択肢を意図的に相手に与え、心理的に揺さぶりをかける「駆け引き」に使っている。

シュートに備えたゴールキーパーの基本姿勢(構え)は、ゴールに向かうボールの進行を阻止するための大切な準備です。シュートが放たれる複雑かつ緊迫した局面でも、落ち着いてしっかり構えることはシュートストップ成功の秘訣。
そのためのポイントを紹介します。
緊迫したシュート場面で、緊張しては素早く動くことはできません。とくに上半身の力みは反応を遅らせます。そして、身体が伸び切った状態では、跳躍力、伸張力を十分に発揮することができません。バネをイメージするとわかりやすいいと思いますが、“少し余裕を残した姿勢”の方が、しなやかに、ダイナミックに動くことができます。
✔ 上半身は力みすぎず
✔ 巻き足(浮力・安定)
✔ しかし、意識は集中
✔ 少し小さく構える
シュート場面でシューターに対して真正面で向き合うことで、ゴールを隠す、シュートコースを狭める、さらにシュートが身体に当てコースを変える(ディフレクション)際に、ゴール方向にボールをいかせないことにも繋がります。
一方で、角度がある位置(1・5)からのシュート時に、シューターに正対してしまうと、シュートキャンセル後のポジション修正が遅れてしまいます。そのようなことから、ゴールキーパーは、シュートされるボールを見極めるための状況把握、予測、判断能力といったクリエイティブさが求められます。
✔ ゴールを隠す
✔ シュートコースを狭める
✔ ディフレクション時のボールがゴールから外れる
シュートに備えたゴールキーパーの基本姿勢(構え)の際、手が身体の横や後ろにあると、動作に遅れが生まれます。手を自分の視界に入る位置ぐらい前に出すことで、上半身(肩周り)の動きがスムーズになります。ボールと手を合わせやすさ、ボールの勢いに押されにくいなどの優位性があります。
✔上半身(肩周り)の動きがスムーズ
✔シュートコースを狭める
✔ボールの勢いに押されにくい
✔バウンドシュートへの対応
✔キャッチ・ディフレクトが安定する

シュートされたボールは、ゴールの方向に向かってきます。そのボールへのアプローチの仕方(ボールの軌道と到達点)を知っておくことで、シュートストップの成功率は変わってきます。身体の前にある手でボールの軌道に合わせるためのポイントを紹介します。
シューターの手からボールが離れる瞬間まで目を逸らさない。
ボールが手に当たる瞬間まで、目でボールを追う。
目を瞑らない、瞑らされない。
ボールを追いかけるのではなく、軌道に手を出し、“到達点”までのルートを遮断、ボールに勢いに押し込まれように、しっかり捕らえる、止める、または方向を変える。
手は指先までしっかり意識して開くことによってボールとの接地面を大きくすることができる。指先までの意識が薄いとボールの勢いに押されてしまい指や指先の怪我のリスクが高まる。
腕を大きく振るほど遅れやズレが生じる。
最短距離で、コンパクトに、的確にボールの軌道に合わせていく。

セービングを伴う場合、手から動かすのではなく
“頭を起点”に動かす。
水上では陸上のような地面からの反動を利用できません。
よって、身体の最上部にある、頭が水上動作の出発点になりやすい。
頭の重さの平均は、一般的に 約4.5~5.5キログラム程度といわれています。
頭が動けば、身体全体が自然に連動します。
上体を回転又は反転させる場合は、水中を浮遊している状態で陸上のように足裏で地面を押さえることができないの「腕・肘・肩」を起点に動かすことが有効です。
腕と肘の反動を使い、肩の位置を変えることでスムーズに身体の向きを変えることができます。
コーチがいなくても、自分で成長する。
そのために、練習後や試合後に確認してみよう。
□ シューター、ボールとポストの三角形を意識できていたか
□ ゴールポストとゴールバーを意識できていたか
□ シュートの瞬間ゴールを隠す位置に立てていたか
□ 巻き足で十分な高さを出せていたか
□ 漕ぎ手で安定した基本姿勢を保てていたか
□ 常に“準備状態”(姿勢・意識)でいられたか
□ ゴールの位置は意識できていたか
□ 構えた際に力みすぎていなかったか
□ 手は身体より前に出ていたか
□ フェイク時“ボールが離れた瞬間”を見ていられたか
□ 腕は最短距離で動かせていたか
□手にボールが当たる瞬間までボールを見ていたか
10項目中7つできていれば合格。
5つ以下なら、基本姿勢から見直そう。
原因:
・焦り
・腕の振りに反応している
・主導権を握られている
修正:
→ 呼吸を整える
→ ボールが手から離れる瞬間まで待つ
→主体的な駆け引き
原因:
・前がかりになっている
・腕が伸びていない
・浮きが足りない
修正:
→ ポジショニングの見直し
→上体や腕の使い方
→ 巻足の強化
原因:
・準備不足
・手が横にある
・身体が伸び切っている
・駆け引きで主導権を握られている
修正:
→予測を含めた準備
→ 手を前に
→ リラックス姿勢をつくる
→主体的な駆け引き
原因:
・足だけで動こうとしている
・足捌き(フットワーク)
修正:
→ 下半身はゴールラインと平行
→ 頭から動く
原因:
・セービングの着水
・意識が一度止めるだけになっている
・想定外の出来事
修正:
→ プレーを止めない
→プレー連続性の習慣化
→セービングの後のプレー予測
まずは「基本姿勢」と「浮き上がり」
✔ 巻足で安定して浮けるか
✔ 頭がバーに近づく感覚をつくる
✔どこまで腕を伸ばせるか
高さと遠さが出れば、世界が変わる。
止められない原因の多くは“浮力不足”、”ボールを見れていない”。
腕を高く,遠くに伸ばせるようになっていこう。
次は「集中力」「予測」と「駆け引き」を磨く。
高校年代では“反応型GK”+“判断型GK”へ。
世界トップGKは、反応に加えて「予測」「駆け引き」で止めています。
✔ シューターの意図を読む
✔シュートミスを誘発
✔ 意図したコースに誘い込む
シューターが主導権を握り、完璧な状態で放たれるシュートを止めるのは容易ではありません。
ゴールキーパーは受け身ならず、その状況での主導権を握る事が大切です。そのようなことからシュートストップは技術ではなく戦術であることもお伝えします。

日本水球がオリンピック・ベスト8常連国になる未来を描くとき、日本から世界ナンバーワンの未来のゴールキーパー(ゴールプレーヤー)の輩出は、日本水球界として取り組まなければいけないテーマです。
✔ 正しい基本姿勢
✔ 正しいポジショニング
✔ 正しいボールへのアプローチ
これを毎日繰り返すこと。
日本代表のゴールキーパーも、今日も巻き足をはじめ基礎力の維持・向上から始まっています。
そして、シュートストップは、技術ではなく戦術です。
シュートは、シューターが放つシュートを止めるだけではなく、シューターとの知的且つ心理的な駆け引きによって優位性を作る事ができますので、身体的な能力だけではなく、ゲームセンスで活躍することもできます。育成年代の皆さんが、チームの練習のみならず主体的にシュートストップの基礎力を高め、さらに奥義を習得することで、タフでクリエイティブな水上ボールゲームの主役を担うことができると信じています。
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技術協力:西村永遠(Kingfisher74/JPN🇯🇵・IREN Genova Quinto/ITA🇮🇹 )
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次回は、シュートマネジメント(GK)―失点リスクの最小化に向けた一連の判断と行動 ―
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(公財)日本水泳連盟水球委員会
デベロップメント部門:ゴールキーパープロジェクト
日本代表部門:ゴールキーパー強化担当
角田壮監(KAKU SPORTS OFFICE)
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